スポーツ × ユーザー体験 = ?

どうも、うつみです。

早いもので半年以上ブログ更新を怠っていました。

久々にちょっとした時間ができたので、更新します。

 

フェンシングの全日本選手権を観てきました

11/3に、渋谷公会堂で行われた「エイブルPresents 第72回全日本フェンシング選手権大会」を観てきました。
http://championship.fencing-jpn.jp/

大学の体育の授業でフェンシングを履修したこともあり、前から興味を持っていたのですが、試合を観戦するのはこれが初めての体験です。元日本代表の太田雄貴さんが会長になられてから、ここ最近のフェンシングの大会がエンタメ化してきており、面白くなってきたという話を聞く様になってきました。
そんなこともあり、今回観に行くチャンスができたのはとても楽しみなことでした。

今日はそこで感じた率直な感想と、これからのスポーツ業界に置ける「ユーザー体験」についてまとめておきたいと思います。

 

ショー化したフェンシングの試合

フェンシングと言えば、中世ヨーロッパの騎士道の決闘的なイメージが一般人としてはあります。白い全身タイツみたいなのをきて、ちょこまか動いて相手にちくっとしたら勝ち、みたいなそんなイメージかと思います。

確かにこの一面だけ観てしまうとあまり面白みがない様に感じます。実際、数年前までは全日本の決勝戦であっても観客がほとんど入っていなかった様です。(無料なのに)

それが今では、渋谷公会堂が満員になります。しかもそこそこいい値段がかかるのに、です。

一体、なぜフェンシングの人気がここまで急激に高まったのでしょうか?理由はいくつかあると思いますが、フェンシングの試合(特に全日本選手権大会の決勝戦)がショー化してきたからというのが大きな要因かと思います。

私が感じた、ショーたる要素

フェンシングが、今回の全日本選手権大会に取り入れていた「ショーっぽさ」は、数え上げればキリがありません。そんな中、私が色々と感じたことを書き連ねてみました。

●場所:
〇〇体育館の様な場所ではなく、「渋谷公会堂(2019年)」や「東京グローブ座(2018年)」など、リアルに「ショー」を楽しむために作られた場所を利用する様になりました。観客としてもゆったりとした背もたれ付きの椅子に座って観れるというのはとても楽で良いです。おそらくこの様なスタイルで観戦できる競技は今まであまりなかったことでしょう。

●配布物:
個人の対人競技によくある「白黒のトーナメント表」などではなく、フルカラーでしっかりとした映画のパンフレットの様な配布物でした。(しかも表紙の写真は篠山紀信さん!!)

中身はフェンシングのルールや、出場する選手を1ページずつ取り上げるという充実ぶり。今戦ってる選手の隠れた素顔などもわかり、非常に親近感が湧きました。なんとなく、こういった些細な情報が、「自ずと応援したくなってしまう環境づくり」に繋がっているのだと思いました。

●決勝戦だけを行う日程:
2019年大会は、11/2(土)に女子の準決勝/決勝 計4試合、11/3(日)に男子の決勝 3試合が行われました。何試合も同時並行で行われるトーナメント戦などでは、たくさんの選手が入り乱れるため、自分の応援したい選手が今どこで戦っているのかわかりづらいですし、個々の試合を集中して見ることがなかなか難しかったりします。そして結果、飽きてしまいます。

一方、決勝戦だけに絞って試合を行うことで、試合数が少なくなり、初めてフェンシングを観る観客 でも一つ一つを集中して観ることができる様になります。「フルーレ」「エペ」「サーブル」と3種目あるフェンシングのルールの違いも楽しむことができ、各々の種目での戦い方の違いなどを理解することができます。(実際、私でも楽しめました)。 観客としても、「日本一を決める最高の試合」を一通り観ることができるので、満足感は非常に高かったです。

●MCやパフォーマンス:
これも、ショー化するのに非常に重要な要素だと思います。今回の大会では、各種目が始まる前に、そのルールや特徴などを初心者でもわかりやすい様に噛み砕いて説明していました。実際にデモンストレーション試合を観ながら解説を行ってくれていたので、非常に理解しやすく、いざ「決勝戦」を観るときも、なんとなく理解しながら観戦することができました。
MCも非常に軽快で、時折笑えるポイントもあったりしていて飽きなかったです。

MCといえば、試合のリアルタイム実況もよかったです。観客全員にオリジナルのイヤホンが配られ、それを耳に入れておくと試合中に実況/解説が聴けるという仕組みでした。会場でマイクアナウンスしてしまうと、聞きとり辛いですし、選手も集中できないことでしょう。そういったことを配慮したイヤホンだったのかと思うのですが、個人的にこれは非常に満足感の高いものでした。試合が止まっている休憩時間中なども選手(時にはコーチ)の豆知識なども聞けて飽きさせない実況でした。

オープニングで行われたRedio Fishによるダンスパフォーマンスも非常に格好良かったです。プロジェクターを活用したダンスは、とても先進的で見るものを惹きつける効果があったと思います。グッとフェンシングの世界観に没入させる仕組みづくりが非常に上手いように感じました。

●フェンシングを楽しめる場所作り:
会場には「なんちゃってフェンシング」が楽しめるエリアや、グッズを買えるエリアも併設されていました。試合を観てみて、やりたくなったという欲求をすぐに満たすことができるため、これをきっかけにフェンシングを始めたくなってしまう人も少なくないのではないでしょうか?

さらには会場全員参加型のフェンシングゲームにチャレンジする時間などもあり、普段は全くする機会のないフェンシングという競技をより身近な物にする工夫が随所に織り込まれていました。実際の試合中だけでなくこういった小さな環境づくりがとてもうまいなと感じました。

●ビジュアライズや音響:
最後になってしまいましたが、一番感動したのがこれです。
会場には大きなスクリーンが設置され、見やすいのはもちろん、選手のリアルタイムの心拍まで表示していたりして、運営側の「魅せたい」という思いが強く伝わってきました。

特に、今回の大会はライゾマティクスが開発した「Points of a sword visualization system」を利用した、「Fencing Visualized」というシステムが良かったです。

選手に特殊な機材を取り付けずに、姿勢や剣の位置を検知し、それをARで表現するというものです。これのおかげで観客は、どういった剣の動きを行い、どこにどう当たったのかがわかりやすくなりました。見やすさはまだまだ改良の余地ありという感じでしたが、確実にフェンシングという競技がわかりやすくなっていましたし、フェンシングを「ショー化」するのに欠かせない要因を作っていたと思います。

また、ビジュアルだけでなく、音でも表現していました。選手がポイントを取ると、超低音の音がスピーカーから流され、「ドン」という様な振動を体で味わうことができました。これは観客の「無意識」に直接影響を及ぼし得る効果だった様に感じます。意識化されにくい所にもしっかりアプローチしており、五感で楽しめる、すごい表現手法だなあと感じました。

 

スポーツ × ユーザー体験

音楽がそうだった様に、現在世の中は急速に「ライブ」を求める風潮に変わりつつあります。CDを買う時代は急速に衰え、人々はYoutubeやストリーミング配信でほぼ自由に音楽にアクセスすることができる様になりました。そのような流れの中でミュージシャンたちは「ライブ」を売るように変貌してきています。ネットを利用してファンを集め、自分たちのライブに来てもらってお金を得るというビジネススタイルです。

今を生きる私たち消費者は、ユーザー体験に金を払うようになってきました。英語のUX(User Experience)という言葉の方が馴染み深いかもしれません。
モノではなくコトにお金を払うのです。その時その場所でしか味わえない体験にお金を払っているのです。それを売買し、感動を得ることこそが時代の主流になってきているように感じます。

 

「スポーツもこの流れに乗っているのかもしれない」
フェンシングの全日本選手権は、そう感じさせる大会でした。

綺麗事だけではビジネスは成り立ちません。やはりその競技を広めていくにはお金が欠かせないのは事実です。その問題に対する解決策の一つが、フェンシングのこのやり方なのかなと思いました。
思い返せば、日本で人気のあるスポーツはこのシステムが上手に出来上がっています。野球観戦しかりサッカー観戦しかり、その場所に行って熱狂体験を味わうことに観客はお金を払っているのです。そしてこう行った基盤ができて、初めて広まっていくスポーツへと変貌していくのではないでしょうか?

フェンシングは、そのようなショー化させるのに向いた競技だと思いますし、それをしっかりやり遂げようと進めている太田雄貴というビジョンを持ったパイオニアがいたからこそ、今こうして花開いてきているのだと思います。「オーディエンスファースト(観客第一)」というフェンシングのスローガンも、そういった背景があるからこそ生まれた言葉だと思いました。

これからもさらに進化してきて、我々を驚かせてくれると思います。スポーツとユーザー体験を掛け合わせていくと、どんな面白い形になるのか?今個人的にとても楽しみにしている世界です。

それでは、また。

 


おまけ

これは今後の改善点に繋げられるかなと感じた点です。決してBad Pointではないのですが、これが満たされるとより良かったなあと思います。もし、関係者の目に止まる機会があれば参考にしてもらえると幸いです。

・荷物置き場が欲しかったです。コインロッカーでも有料クロークでもなんでも良いです。私は札幌から見にいったためスーツケースがあり、そのやり場に困りました。。。事前にHP等で荷物置き場がないことを知る術があれば、駅で置いてくるといったこともできたので、ちょっと残念でした。

・イヤホンの装着タイミングを知らせて欲しかったです。常に実況が流れている訳ではなかったので、つけ続ける訳にも行かず、かといって聴き逃したくない、、という様な感じでした。3D映画の上映の様に、「今からつけてください」的な合図があると嬉しかったです。

・Fencing Visualizedはかっこいいけど、もうちょっとスローで見たかったです。確かに、素人にはわかりづらい剣の動きや体の動きを見れる様にしてくれていたのは助かりますし、楽しめる要素の一つでした。しかし、あまりにもスピードが早く結局「ごちゃごちゃ感」が抜けきれていなかった様に思います。せっかくモデリングしてあれだけの3D情報を取得できているのであれば、それをスローモーションにして見せてもらいたいです。個人的には、キラキラひかるエフェクトよりも、よりシンプルに見やすい加工がなされていることを希望します。
また、棒人間で表示するのも体の動きを見たい人には良い表現方法かもしれませんが、観客には向かない様に思いました。(透けてしまい、剣先の情報がより見づらくなっていたため)
可能ならより人型近く、フェンシングの格好をしたモデルでも使った表現方法にしてもらいたいです。

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